14.4. 生物学的新奇性の進化
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古い構造の新しい機能への適応
進化的新奇性が出現する1つの方法は、ある役割を演じていた構造が、徐々に異なる役割を果たすようになること ある背景で進化した構造が、もう1つ別の機能に適応するようになること ある構造が今とは別の機能に適応するようになれることを示唆する
ある構造が将来の用途を予想して進化することを意味しない
新機能は、各機能がその生物が置かれているその時々の状況下で機能する中間段階を経て、徐々に現れることができる
外適応は新しい構造の進化を説明することができる
鳥は、蜂の巣構造の骨でできた軽量の骨格をもつが、この特徴は先祖の恐竜でも見られる 化石記録によれば、軽い骨は飛行に先行したことが明らかになっているので、それは地上でも何かしらの機能をもっていたに違いない
鳥の祖先は、小さな、機敏な、二足歩行の恐竜であり、軽い骨格から利益を得ていたであろう
さらに、羽毛をもつ翼状構造は、前肢の表面積を増やした
この拡大した前肢は何らかの他の能力、たとえば熱の制御、求愛行動や擬態(翼が今日なお演ずる役割)として機能した後に、飛行に適応した
最初の飛行は、餌を追いかけるか、捕食者から逃げるための滑空のみ、あるいは跳躍距離を延ばしただけだったかもしれない
飛行が進化した後に、よりよい羽毛と翼をもつ動物は自然選択されるうえで有利であったであろう
生物学的新奇性が古い構造を改造することによって進化するという概念は、大きな変化が自然選択によって作られた多くの小さな変化の蓄積であるというダーウィン以来の伝統
進化発生学 : 発生と生物学的新規制
例えば鳥類における飛行への適応の蓄積のような漸次的な進化的改変には、おそらく集団中の多数の遺伝子の変化が関係している
大進化の他の例では、たった数個の遺伝子の変化が、生物間の大きな構造の差異に拡大されることがある
発生をプログラムする遺伝子は、接合子から成体にまで発達する際に、生物の形の変化率、タイミングと空間パターンを制御する 種の発生プログラムにおける微妙な変更は、重大な効果をもつことがある
同一、あるいは非常に類似した遺伝子が、複数の系統において体の発生に関与している
これらの遺伝子の数、塩基配列と制御における変化は、ボディプランの膨大な多様性につながった 多くの著名な進化的変化は、発生イベント上の比率あるいはタイミングの変化の結果
幼形進化では、祖先種で幼生のみがもっていた特徴が、成体でも保持される
アホロートルは、生体の大きさに成長しても、サンショウウオの大部分の種における幼生の特徴である外部のえらを失うことなく繁殖する
幼形進化は、人間の進化でも重要であった
発生が進行するに従い、不均一な骨の発達による大きな眼窩上隆起と大きいあごにより、チンパンジーの頭は鋭く角張ったようになる チンパンジーの生体は我々より非常に大きな強いあごをもち、その歯は比率的により大きい
対照的に人間では、明らかに丸く、胎児のような輪郭の頭を持つ
いいかえれば我々の頭は幼形進化
すなわち我々が成熟した後でさえ、胎児の特徴を保持している
脳はもう一つの大きな特徴
脳の成長のスイッチはヒトでは発生のずっと後期になるまで切られないので、チンパンジーに比べてヒトの脳は比率的に大きい
それは幼年期のプロセスを延長することと解釈できる
ホメオティック遺伝子(マスター制御遺伝子)は、1対の翅や足がショウジョウバエのどこで発達するかなど、基本的な特徴を決定する そのような遺伝子自体の、あるいは遺伝子がどこで発現するかという変化は、体の形態に深い影響を及ぼすことができる
発生中の手足(魚では鰭)において、特定のホメオティック遺伝子が発現する場所の範囲は、初期段階では魚と四足動物で同じ しかし、発生を続ける四足動物の手足における第二の発現場所では、脚の骨に発達する余分の骨格の要素がつくられる
このような遺伝子発現の変更は、魚の一対の鰭から歩行する脚への進化につながったように思われる
ショウジョウバエには主要部位の発生を指示するホメオティック遺伝子のクラスターが1つある
マウスではこれらの遺伝子のクラスターが4つある
これらの遺伝子集団の2回の重複は、無脊椎動物から脊椎動物への進化の途中で起こったと思われる
これらの重複した遺伝子の突然変異は、脊椎動物の新しい特徴の起源につながった可能性がある
たとえば、ある遺伝子は背骨、あごと四肢の発展を指示するような新しい役割を担うようになったかもしれない